眺望が魅力の北穂高岳。北穂から見える東西南北の山を北穂OBの山岳カメラマン、渡辺幸雄氏の写真と解説でお楽しみください。

360°の大パノラマ、北穂高岳。

北穂高小屋とも縁が深い山岳画家の牧潤一氏(故人)曰く、「世界三大パノラマ」と名付けた展望地にヨーロッパ・アルプスのゴルナーグラート、ネパール・ヒマラヤのゴーキョピーク、そしてこの日本アルプス・北穂高岳からのパノラマを挙げています。北穂高岳からの眺望は世界にも誇れるほど素晴らしいと評価されています。心ゆくまでこの絶景を堪能したいものです。

(北方)
北穂高岳からの槍ヶ岳
(8月上旬、08:00)

北穂高岳を代表する展望が槍ヶ岳の眺め。ここから見る槍ヶ岳が最も美しく、しかも槍ヶ岳らしさが出ていると感じるのは僕だけだろうか。槍ヶ岳から穂高連峰へは大喰岳、中岳、南岳と3000m峰4座が連なるが全てがこの一枚に凝縮されている。

(東方)
北穂高小屋テラスからの日の出と常念岳(8月中旬、05:00)

常念岳の真上から朝日が昇るのは8月中旬。ちょうどお盆の頃となるが、夏の間は大まかに言って常念岳方面から朝日が顔を出す。ちなみに春は5月1日頃が常念岳の真上からの日の出となり、たまたまだがこちらもGW期で小屋は賑わう時期になる。

(南方)
北穂高岳から見る前穂高岳と奥穂高岳
(8月中旬、08:00)

左が前穂高岳、右が奥穂高岳、手前にはテント場の南稜テラス。
北穂高岳のキャンプ指定地は涸沢からのルート途中にある北穂南稜テラス。テント人気の昨今だが、トイレや水の補給に北穂高小屋まで約10分強足を運ばなければならず、穴場的なテント場である。
奥穂高岳などが間近に見られ景色が素晴らしいだけに個人的にはお勧めなのだが。

(西方)
北穂高小屋から望む夕日と雲海の笠ヶ岳
(10月中旬、17:00)

10月も中旬になると夕日は加賀の白山に沈むようになる。蒲田川に雲海が入り、奥には奥飛騨の名峰・笠ヶ岳が雄大な山容を横たえている。残照が雲を赤く染め抜き、一日の終わりを遂げようとしている。年に数えるくらいしかない、絶好の機会に巡り会えたことが嬉しい。

(トップページメイン写真)
北穂高岳より朝の雲海に浮かぶ槍ヶ岳
(8月下旬、05:30)

朝、目が覚め窓の外を覗いてみると雲海が広がっている。大急ぎで撮影の準備をして小屋の端、大キレットの下り口に三脚を構えシャッターを切る。雲海の時は陽が差し込んだ後の方が、太陽の赤みが差しいい雰囲気になる。この時は珍しくほぼ全方向に雲海が広がっていた。


渡辺幸雄/山岳カメラマン
1965年埼玉県越谷市生まれ。東京綜合写真専門学校を卒業後、北穂高小屋勤務を経てフリー。 「山と溪谷」「岳人」などの山岳雑誌で活躍中。北アルプスやネパール・ヒマラヤなど国内外で撮影活動を行っている。著書に「アルペンガイド 槍・穂高連峰」(山と溪谷社刊)などがある。(社)日本写真家協会会員。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。